戦うロボットは好きですか?

 泥臭いメカは好きですか?

 鉄と血と硝煙の臭いが漂ってくるような乾き果てた、熱い空気にどこか
惹かれることはありませんか?

───このゲームは、そんな人におすすめできる逸品です。


Front Mission Alternative

         (alternative:二者択一の・代わりとなる・新しい)  フロントミッションオルタナティヴ(以下FA)は、1997年にPS用ゲーム ソフトとしてスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されまし た(公式HP)。  かなり強烈な存在感を持っていたゲームなのですが、発売から五年以上 を経た現在では全く忘れ去られ、シリーズの再販からも漏れて闇に葬られ ようとしています。  ならばFAをプレイした、完全にのめり込んだ人間の一人として、誰かに フロントミッションオルタナティヴというゲームの存在を知っていて欲し い、という衝動のようなものに動かされて、レビュー擬きの文章を以下に 書きました。参考になるかどうかはわかりませんが、これを見てFAという ゲームに興味を持っていただける方がいれば幸いです。 ■概要■  前作フロントミッション1から時を遡り、ヴァンツァーと呼ばれる二足 歩行兵器の原型、ヴァンドルングヴァーゲンが産声を上げた時代。  FAにおける主役は、紛争の続く21世紀のアフリカに投入された、世界最 初のヴァンドルングヴァーゲンによる実戦部隊です。  開発されたばかりで、まだよちよち歩き程度しかできないヴァンドルン グヴァーゲン中隊を指揮して戦闘に臨む主人公。しかし最前線で経験と実 績を積んだ兵器は成長と発展を続け、そして紛争の裏に潜むものがおぼろ げに現れてくる……といった辺りは戦争物としての王道でしょう。  シリーズ中で唯一FAのみがミッションの結果によって分岐するマルチシ ナリオを採用しているため、進め方によっては以前のプレイとは違うスト ーリーをたどり、全く異なるエンディングを迎えることもあります(ゲー ムオーバーにすら結果としてのエピローグが用意されています)。 ■ロボ好き必見■  まず書いておくべきなのは、ゲーム中でのヴァンドルングヴァーゲン( 主人公達が乗る戦闘用ロボット)の動きが恐ろしいほどに多様なものであ ることです。ポリゴンとテクスチャーで構成された二足歩行兵器が画面内 で走り、ジャンプし、しゃがみ、敵に向けて残像を残しながらカメラアイ を動かす。決して素早くはありませんが、人間じみたその動作はロボット 好きにはたまらないものである筈です(モーション数の多さはほぼ間違い なくPS随一でしょう)。  さらにこのゲームの見所は、それら人間のように動く機体が「集団で」 戦う事にあります。味方だけでも9機、敵を含めるならば最大で24機もの ロボット同士がリアルタイムで集団戦を行うなどという状況を味わえるゲ ームはそうはありません。 ■人々■  FAに登場するキャラクターは敵味方を含めてそれほど多くはありません。 主人公を含むそれぞれの機体の操縦者、補給部隊の人間、指揮官や名前の あるゲストを全て合わせても、おそらく三十人程度でしょう。  ただし、プレイヤーに対して見せるキャラクターの方向付けは相当に独 特です。各キャラの画像は顔グラフィック一枚しかありませんし、自身に ついてべらべらと語り出すようなことはほぼありません。  しかしブリーフィングの間や戦闘中、イベントが起きた時などにはそれ ぞれが通信画面を開いて何らかのリアクションを取ります(目標地点に着 いた時、弾が尽きた時、撃破された時、等々)。同じ状況でも各々の発言 は全く異なっていて、その違いからプレイヤーは各キャラクターの性格を 推測できる、という寸法です。  なお、戦闘を終了する時にも会話イベントが発生しますが、会話に加わ る機体が一機でも欠けてしまうとそのイベントはカットされてしまい、見 ることはできません。  このイベントでキャラクター同士の関係が語られることが多々あるため、 損害が大きい状態でクリアし続けていった場合、(それまでの会話を見て いないために)後々のイベントが唐突に起こったように感じてしまうこと があります。戦いの狭間で、一体どのようなエピソードがあったのか確認 するためにも、なるべくなら全員が撃破されないようにしてみましょう。 ■ゲームシステム■  これもまたFA独特の特徴ですが、プレイヤーは戦闘中に直接自機を操作 することができません。戦闘行動は時間によって成長するAIが自動で行い ます(プレイヤーは攻撃重視・防御重視という形で、攻撃の開始と停止の 制御が可能です)。  戦闘前にプレイヤーは機体の装備を自由に組み替えることができます。 武装の他にも迷彩(地形に溶け込むような色彩を選択すれば敵からの命中 率が低下します)や、AIの行動を決定する学習値の割り当てを行えます。  学習値の割り振りは重要な要素で、機動・攻撃・防御の三種に割り振ら れた学習値×戦闘時間の分だけ機体のAIは成長します。最初はただ歩いて 撃つだけですが、学習が進めば回避行動や対空攻撃などの行動パターンを 増加させて、戦闘をより有利に進めることができるようになります。  戦闘中にプレイヤーが行うのは指揮下の部隊(最大三つの小隊)の進路 を選択し、より上手に敵部隊と交戦させてやることです。進路を決めた後 は各小隊の動きを視点を操作しながら見守りましょう。  ただし、部隊はよく障害物や地形に引っかかってしまうため、なるべく 開けた地形を進ませてやる必要があります。引っかかったら無理に押し通 ろうとせず、いったん後退させましょう。  一見退屈そうにも思えますが、敵味方全てがリアルタイムで動くために、 うまく各小隊に目を配ってやらないと、どこかで引っかかったあげくに挟 撃を受けたり、集中砲火を浴びてあっという間に全滅などということもあ りえます。  操作に慣れていけば火力集中と各個撃破も容易になるでしょう。その時 は数の暴力を存分にお楽しみください。 ■おまけ■  FAは制作者の趣味なのか、登場する小道具(武器や装備、器材等)の名 称のほとんどが隠語で構成されています。敵の機体やコードネームが危な いドラッグの名称だったり、自軍の機体の愛称がカクテルの名前だったり するのは序の口で、中にはよく出せたなこんなのというものも。  例えば自軍の銃器、火器類はほぼ全て勃起したペニスを意味するスラン グだったり(二つだけ確実に違うものがあります)。  それに対応して砲火を防ぐシールド類は全て避妊用具の名称だったり。 #一応隠してます。見たければCtrl+Aか反転。  なかなかの皮肉です。再販されないのはこれが原因だったりして。  ……やっぱり戦力集中して一斉砲撃を浴びせるのは林間とかジョンソン とかいうことになるんでしょうね(思いっきり下品にシメ)。 ■参考サイト■  FAの攻略や資料で参考にさせて頂いたありがたいサイトです。  無断リンクですが。  F.A. - Vision  F.M.F.F.O.